「忙しかった」だけで終わる夜に。くろさら『鳴らない時計』が描く、自分を待たせていた日々

🌱 人生を面白く

今日も、一日よく働いた。

メールを返した。頼まれたことを片づけた。予定に間に合わせた。途中で増えた仕事にも、なんとか対応した。

それなのに、帰り道でふと思う。

「今日、自分は何をしたんだろう」

何もしていなかったわけではない。

いや。むしろ、ずっと何かをしていた。

けれど、自分のために使った時間を探すと、うまく思い出せない。

くろさらの楽曲『鳴らない時計』は、そんな毎日の中で、静かに後回しになっていたものを描いた曲です

今回のMVでは、会社と家を行き来するくろさらの日常に、無人の廊下、冷めた珈琲、窓から差し込む光、机の隅の白い紙を重ねました。

忙しさの隙間に置き忘れてきた、自分の時間。

少しだけ立ち止まって、この物語を見てもらえたらうれしいです。

「急ぎです!」は、ちゃんと届くのに

仕事の期限は、わかりやすくやってきます。

画面に通知が出る。
誰かから声がかかる。
締め切りが近づけば、確認の連絡も来る。

だから、忘れずに対応しようとします。

一方で、自分がやりたかったことは、ずいぶん静かです。

書いてみたかった文章。
少しずつ覚えたかったこと。
いつか形にしたいと思っていたアイデア。

今日やらなくても、誰からも催促されません。

その静かさに甘えて、私たちはつい順番を後ろに回してしまう。

やるべきことは増えていって
やりたかったことは減っていく

この歌詞には、大きな事件は出てきません。

ただ、よくある一日の積み重ねがあるだけです。

だからこそ、少し胸に残ります。

何かを諦めるとき、必ずしも「諦めよう」と決めるわけではない。

「今日は無理だから、また今度」

その小さな延期を繰り返しているうちに、いつの間にか遠くなっていることもあるのだと思います。

窓の外では、ちゃんと春になっていた

MVの中に、春の光が差すオフィスで、くろさらが頬杖をついている場面があります。

窓の外は明るい。
木々には新しい葉がある。
けれど、机の上には、いつもの書類が積まれている。

世界は少しずつ変わっているのに、自分だけが昨日の続きを過ごしているように見える。

この場面を、今回のサムネイルにも選びました。

忙しさは、いつも暗い場所にあるとは限りません。

穏やかな昼間にも、いつもどおりの職場にも、「自分のことは、あとでいいか」は紛れています。

誰かの期限を守るために
自分の季節を遅らせていた

季節を遅らせる、という言葉が、この曲にはよく似合います。

自分のやりたいことを捨てたつもりはない。
忘れたつもりもない。

ただ、始める日を、少し先に置いている。

その「少し先」は、本当に近づいているだろうか。

窓の外の春は、そんなことを静かに問いかけているように感じます。

白い紙は、失敗しない

このMVには、白い紙が繰り返し登場します。

机の隅に置かれた紙。
珈琲の横で、影だけが落ちる紙。
夜になっても、まだ何も書かれていない紙。

白いままなら、間違いはありません。

うまく書けなかった跡も、消した跡も、人に見せるのが恥ずかしくなるような一文も残らない。

でも、何も残らないことには、別の寂しさがあります。

綺麗なままでいることと
何もしないことは似ていた

始めたいことほど、最初から大事に扱いすぎてしまうのかもしれません。

ちゃんと時間が取れたら。
もう少し準備ができたら。
納得できるものが作れそうになったら。

そうやって守っていたはずのものが、手をつけない理由になっていく。

紙が白いのは、可能性が残っているから。

けれど、その可能性に触れるには、どこかで一度、綺麗な白を汚さなければならない。

『鳴らない時計』は、その最初の黒い跡までを描いています。

大きな決意ではなく、「今日は一行だけ」

この物語の変化は、とても小さなものです。

すべての仕事が片づくわけではありません。
明日から突然、自由な毎日が始まるわけでもありません。

くろさらは、ただ一行を書きます。

だから今日は一行だけ
白い紙に文字を書いた

たった一行。

でも、その一行には、「いつか」のままにしなかった今日が残っています。

新しいことを始めようとすると、つい大きな計画を立てたくなります。

毎日続けよう。
きちんと完成させよう。
誰かに評価されるものにしよう。

けれど、この曲の「一行だけ」には、もう少し手前に戻ってもいいようなやさしさがあります。

完成まで進めなくても、今日は触れてみる。

文章なら、一文。
勉強なら、一問。
作りたいものがあるなら、思いつきをひとつメモする。

「やりたかった」を、「少しやった」に変える。

それくらいの始まりでも、自分との約束に応えたことになるのだと思います。

鳴らない時計は、止まっていなかった

仕事の通知とは違って、自分の時間には、わかりやすい警告がありません。

今日も後回しにしたからといって、誰かに怒られるわけではない。

だから、まだ大丈夫だと思ってしまう。

でも、音がしないことと、時間が進んでいないことは、同じではありません。

鳴らない時計のその先で
僕は僕を待たせていた

待たせていた相手は、未来の立派な自分ではなく、今もここにいる自分だった。

この曲の終わりには、そんな気づきがあります。

MVも、朝の机から始まり、また朝へと戻っていきます。

同じように窓の外が明るくなり、また一日が始まる。

けれど、紙はもう、白いままではありません。

昨日までとよく似た朝に、小さな違いがひとつある。

その違いを持って、今度は自分から今日を迎えに行く。

派手な結末ではありませんが、この物語に似合う、確かな一歩です。

あなたが待たせているものは、何ですか?

「落ち着いたら、やりたいことがある」

もし今、そう思うものが浮かんだら、今日はその名前だけでも書いてみませんか。

人に見せなくてもいい。
うまく説明できなくてもいい。

自分がまだ、それをやりたかったのだと、思い出すために。

『鳴らない時計』が、あなたの中にある静かな時間へ、耳を澄ますきっかけになれたらうれしいです。

聴き終えたあと、あなたの「一行」が浮かんだら、ぜひコメントで教えてください。

仕事を、もっとラクに。人生を、もっと面白く。

仕事を片づける工夫と一緒に、その先で何をしたかったのかも、大切にしていきたい。

B★KS blogは、そんな毎日に寄り添う場所でありたいと思っています。


『鳴らない時計』/くろさら
歌詞付きミュージックビデオ

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