今日も残業お疲れさまです。
ブラック企業勤続15年、エリート社畜の「くろサラ」です。
2025年11月は、アパレル各社の月次がかなり「明暗くっきり」した月でした。
同じ日本で商売しているのに、
- ユニクロ・しまむら:増収 ◎
- アダストリア:微増 ◯
- ニトリ:減収 ☓
と、ここまで結果が割れるのはなぜか?
今回は外部環境(PEST+気温)と、各社の内部環境(ビジネスモデル・戦略)を重ねて、
問題点と改善策、そして今後の展望までまとめておきます。
1. 2025年11月 アパレル4社の売上実績まとめ
まずは、いつもの「売上昨対」の全体像から。
① 既存店ベース売上 高前 年比
| 企業 | 指標 | 前年同月比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| ユニクロ(国内) | 売上高 | 107.6% | 既存店+EC 2カ月連続プラス |
| しまむら | 売上高 | 116.0% | 既存店、8カ月連続プラス |
| ニトリ(国内) | 売上高 | 94.3% | 既存店、3カ月連続マイナス |
| アダストリア | 売上高 | 101.2% | 既存店、2カ月連続プラス |
② 売上=「客数 × 客単価」で見る
| 企業 | 売上高 | 客数 | 客単価 |
|---|---|---|---|
| ユニクロ(国内) | 107.6% | 102.8% | 104.7% |
| しまむら | 116.0% | 113.4% | 102.3% |
| ニトリ(国内) | 94.3% | 90.8% | 103.8% |
| アダストリア | 101.2% | 102.4% | 98.8% |
ざっくり整理すると
- ユニクロ:
客数も単価も両方伸ばして「バランス良く増収」 - しまむら:
特に客数の伸び(+13%)でガツンと売上を伸ばしたタイプ - ニトリ:
客数は大きく減少、単価は上がったけれどトータル売上はマイナス - アダストリア:
客数は増えたが、単価が下がって「薄利多売」気味
ここまでは「数字の事実」。
ここから先は、外部環境と内部環境を重ねて読み解いていきます。
2. 外部環境(PEST+気象)の整理
2-1. 経済環境:名目賃金は増えるが、実質はまだマイナス
- 名目賃金は前年同月比+1.9%と伸びている一方、
実質賃金は▲1.0〜1.4%程度のマイナスが続いています。 - 家計の財布のひもは依然として固く、2025年10月の家計消費は▲3.0%と大きく落ち込み。
👉 「何となくお金は増えている気がしない」
そんな生活者の感覚が強い環境での11月商戦です。
高単価商品は理由づけ(機能・ブランド・長期使用)が無いと動きづらい状況。
2-2. 社会・価値観:節約志向+サステナ意識
- 物価高の長期化で「コスパ」「無駄な買い物はしない」が定着。
- 同時に、ファッション産業の環境負荷(CO₂排出など)が社会問題として認識され、
サステナ素材・長く使えるベーシック品への志向も続いています。
👉 「安いだけ」より、
「この値段でこの品質なら買ってもいい」
という納得感が重要。
2-3. 技術・チャネル:OMO強者と弱者の二極化
- 日本のアパレル市場では、店舗×ECを統合したOMO戦略で成功する企業と、集客・広告費高騰に苦戦する企業の二極化が進行。
- SNSを起点にした「発見」→EC購入、店舗受け取りなどのシームレス体験が売上を左右。
👉 単に「オンラインショップがあります」では足りず、
在庫・顧客データ・レコメンドまで一体運用できるかが勝敗を決めるフェーズ。
2-4. 気象:10月は暖かく、11月で一気に「冬モード」
- 10月は記録的な高温。一方で予報どおり、11月は急に寒く感じる「気温の落差」が発生。
- アパレル各社は11月の冷え込みで冬物衣料が動き、ユニクロ・しまむら・アダストリアは増収
- ただしニトリは、「平年よりやや高めの気温で寝具が苦戦」と説明しており、家具・寝具中心のプレイヤーには向かい風となりました。
👉 同じ“寒さ”でも、体感差と商材構成で追い風・逆風が分かれた月と言えます。
3. 各社の内部環境分析(ビジネスモデル+11月の結果)
3-1. ユニクロ:定番×機能性×グローバル旗艦の「安定エース」
ビジネスモデルの軸
- SPA+グローバル展開(大量生産×高回転)
- 「ヒートテック」「フリース」「パフテック」など機能性ベーシックのブランド化
- コラボライン(UNIQLO:C、デザイナー・ブランドコラボ)で話題を作る
11月の結果の意味
- 既存店+EC売上:107.6%(客数+2.8%、単価+4.7%)
- 「感謝祭」+気温低下+定番冬物の組み合わせで値上げ後の価格帯でもしっかり売れている。
- 単価アップは、
- 値上げ転嫁
- 上位ライン(コラボ・高機能アウター)へのシフト
の両方が効いていると考えられます。
内部環境まとめ
- 強み:ブランド力・機能性・安定した商品サイクル・グローバル分散
- 弱み:ベーシック偏重ゆえの「マンネリ」リスク、値上げ許容度の上限
3-2. しまむら:客数爆増型の「量で勝つディスカウンター」
ビジネスモデルの軸
- 低価格×トレンドミックス
- インフルエンサー・キャラクターコラボ、PB(SEASON REASONなど)
- ローカル商圏に根ざした“郊外GMS的ポジション”
11月の結果の意味
- 既存店売上:116.0%、客数:113.4%、客単価:102.3%
- アウター・インナーなど冬物が「とにかくよく売れた」月
- 売上増分のほとんどは客数の純増で、
「しまむらなら冬物まとめて揃えよう」という来店動機が強かったと推測できます。
内部環境まとめ
- 強み:価格訴求・PB企画力・キャラ/インフルエンサーコラボ・郊外ドミナント
- 弱み:EC・デジタルの弱さ、ブランド世界観というより「安くてごちゃっと」の印象になりやすい点
3-3. ニトリ:住まい全体を押さえるが、11月は「寝具頼み」が裏目
ビジネスモデルの軸
- 家具・インテリア+ホームファッションのトータルコーデ提案
- 「お、ねだん以上。」のバリュー訴求
- N+などアパレルも展開するが、売上の主軸はあくまで家具・寝具・生活雑貨
11月の結果の意味
- 既存店売上:94.3%(▲5.7%)、客数▲9.2%、客単価+3.8%
- 会社コメント:「やや平年より高い気温で、寝具を中心に苦戦」
- 「少ない客数に、高単価の買い物をしてもらって何とか単価を上げた」が、
全体としてはマイナスという構図。
さらに4〜9月期の決算でも、
国内既存店の客数減が減収・減益要因と明言されており、構造的な客数課題が見えています。
内部環境まとめ
- 強み:住まいトータル提案・物流/SCM・プライベートブランド力
- 弱み:
- 家具・寝具など高単価商材比率が高く、景気の揺れや天候の影響を受けやすい
- アパレル(N+など)がまだ「第二の柱」と言えるほど育ちきっていない
3-4. アダストリア:客数は伸ばしつつ、単価はややダウン
ビジネスモデルの軸
- 多ブランド(niko and…, GLOBAL WORK, LOWRYS FARM など)のポートフォリオ
- SC発・駅ビル発のカジュアルファッション+生活雑貨
- D2C/EC強化、イトーヨーカドーの「FOUND GOOD」プロデュースなども展開
11月の結果の意味
- 既存店売上:101.2%、客数:102.4%、客単価:98.8%
- 気温低下によりニット・防寒アウター・ブーツ・ニット帽などが堅調
- ただし、単価がやや下がっているのがポイント。
→ セール/値引き、手頃価格帯商品の比率増加などが影響した可能性。
内部環境まとめ
- 強み:ブランドポートフォリオ、ライフスタイル雑貨との組み合わせ、EC/D2Cの伸長余地
- 弱み:価格帯が“中価格帯”ゆえ、物価高局面では
「ユニクロやしまむらにお客を取られやすい」ポジションになりがち
4. 2025年11月に見えた「問題点」と「改善の方向性」
4-1. ユニクロ:単価頼みになりすぎない“幅”づくり
問題点(リスク)
- 直近は単価アップで売上を伸ばしているが、
実質賃金マイナスの状況が続く中で、価格許容度の天井がいつ来てもおかしくない。
改善の方向性
- 「高単価・高機能ライン」と「ベーシックな価格帯」を明確に分け、
“階段状の価格設計”で層を広く取る - グローバルでは円安メリットもあるため、
海外売上拡大で為替リスクを相殺しつつ、国内では買いやすい価格階段を維持
4-2. しまむら:来店数依存から、LTV・デジタル強化へ
問題点
- 11月は客数爆増で大勝利だが、
逆に言うと「客数が落ちた瞬間に売上が崩れやすい構造」でもある。 - EC/OMOは他社比較でまだ発展途上
改善の方向性
- アプリ・EC・SNSを軸に、
「一度来てくれたお客さんを、継続的に戻ってきてもらう仕組み(LTV)」を整える- パーソナライズしたクーポン
- 好きなインフルエンサー/キャラ軸のレコメンド
- 店舗では、
- 売場の見やすさ(ゾーニング・陳列ルール)
- PBの世界観演出
を改善し、「安いけど雑」から「安くて楽しい」へブランド印象を底上げ
4-3. ニトリ:客数減と“寝具依存”からの脱却
問題点
- 11月度だけでなく、上期決算からも既存店客数減が構造的な課題として表面化
- 寝具・大型家具が気温や景況感の影響を受けやすく、
「暖冬」「買い控え」が重なった時のダメージが大きい。
改善の方向性
- 小型・中価格帯の**“ついで買い”アイテム(生活雑貨・小物・低単価インテリア)**の強化
→ しまむら・無印とぶつかる領域を、ニトリらしい機能+コスパで取りに行く - アパレル(N+)を、
「なんとなく置いている」から一歩進めて、
“住まい周りのライフスタイルコーデ”と一体で見せる売場作り - OMO面でも、家具の3Dシミュレーション・オンライン相談などをさらに磨き、
来店前接点を増やして客数減を食い止める
4-4. アダストリア:単価ダウンを「ブランド価値」で止める
問題点
- 11月は客数増で踏ん張ったものの、単価はマイナス。
値引き・セールへの依存が高まると、
「オシャレだけど安く買えるときだけ買うブランド」というポジションに押し込まれかねない。
改善の方向性
- 各ブランドごとに“世界観と価格”の一貫性を再設計
- 「このブランドはこの価格でも欲しい」と思わせるストーリーテリング
- SNS・ECでの編集コンテンツ強化
- 雑貨・生活グッズとの組み合わせ提案を通じて、
バスケット単価(買上点数)×適正単価の両立を図る - OMOでは、アプリ・会員データを活かし、
「その人が好きそうなブランド横断コーデ提案」で、単価アップを狙う
5. 今後の展望:2025冬〜2026年に向けて
5-1. 共通のチャンス
- 気象庁の3カ月予報では、この冬は「冬らしい寒さ」の日が多くなる見込み
- 本格的な寒さが続けば、
- 冬物アウター
- 機能性インナー
- あったか寝具
などの需要は引き続き期待できます。
5-2. 共通のリスク
- 実質賃金マイナス→節約志向の長期化
- 円安・輸入コスト高 → これ以上の値上げは難しくなっていく
- OMO対応の差が、「強い数社」と「ジリジリ削られるその他」を分ける
6. まとめ:11月の教訓「売上=客数×客単価ד外部環境との相性”」
2025年11月の4社を眺めて、改めて感じたポイントはこの3つです。
- 外部環境(気温・景気)は、味方にも敵にもなる
- ユニクロ・しまむら・アダストリア:気温低下が追い風
- ニトリ:暖かめの気温が寝具に逆風
- ビジネスモデル次第で、同じ環境でも結果が変わる
- ベーシック機能×ブランド力のユニクロは「単価」で伸び、
- ロープライス×トレンド多点買いのしまむらは「客数」で伸び、
- 寝具比率の高いニトリは「客数減」で苦戦。
- 「外部環境に合わせた打ち手」を準備していた会社が勝った
- 11月の冷え込みに合わせた冬物の仕込み・販促
- EC停止トラブルに見舞われた良品計画のように、
システムトラブルひとつで売上が大きく落ちるリスクも同時に浮き彫りになりました

ブラック企業で働く身としては、
「外部環境ガチャに文句を言っても給料は増えない」のと同じで、
“今の環境でどう勝ち筋を作るか”を考えるのがプロの仕事だな、と改めて感じました。。
以上、2025年11月度のアパレル4社分析でした。
今日も明日も明後日も、理不尽な社会と会社に負けず、一緒に分析していきましょうね★


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