2025年、トランプ米大統領による追加関税政策が世界経済と企業活動に大きな影響を与えている。
特に日本や韓国などアジア諸国に対しては25%という高い関税が通告され、企業は生き残りをかけた戦略の再構築を迫られている。
この記事では、アラスカLNGなど米国エネルギープロジェクトから自動車、IT、製薬業界に至るまで、各国企業の動きと今後の展望を読み解く。
日本企業にのしかかる「対米投資圧力」――アラスカLNGへの関心高まる
トランプ政権は日本企業に対し、米国での投資を通じて関税の一部回避を促している。
なかでもアラスカ州のLNG(液化天然ガス)事業は象徴的な案件であり、これまで出資に慎重だった日本のエネルギー・商社各社に対して、トランプ政権は「投資を見せてくれれば、税率を再交渉してもいい」と圧力を強めている。
一方で、台湾やタイといった他のアジア諸国もアラスカLNGの調達に名乗りを上げており、日本企業は出遅れれば市場を失うリスクもはらむ。
動く企業:対応は「現地化」か「撤退」か
① 自動車・部品メーカー:現地生産への大転換
- トヨタは米ウェストバージニア州の工場に125億円追加投資を発表し、米国生産比率の強化に動く。
- ホンダはカナダ・メキシコからの輸出を見直し、米国での現地生産比率を9割に引き上げる方針だ。
- マツダや日産も北米工場の稼働率を上げ、国内からの輸出を減らす戦略を採用。
➡ これは「売る国で作る」という“地産地消”モデルへのシフトといえる。
② エレクトロニクス:サプライチェーンの再構築
- AppleはiPhoneの生産を中国からインドへ大規模に移転。
- 任天堂は「Switch 2」の予約開始を延期し、周辺機器の価格改定で対応。
- 富士通はAIで関税コスト影響を試算し、企業のサプライチェーン再編を支援。
➡ 複数国に生産を分散し、関税・リスクを“ヘッジ”する対応が主流に。
課題:政府間交渉の不透明さと中小企業の困難
トランプ政権の関税政策には「文書化された合意がなく、突然方針転換がある」ことが指摘されている。
これは多くの中小企業にとって致命的だ。対米輸出の比率が高い航空機部品、建設機械、中堅食品メーカーは、価格転嫁が難しく、経営基盤を揺るがされている。
関税が“商機”に?――逆手にとる企業も登場
- 日産は「米国生産車は関税非対象」とアピールし販促活動を強化。
- 富士フイルムは米バイオ医薬品受託生産で4200億円を受注。
- 武田薬品は今後5年で4兆円超を米国に投資すると表明。
トランプ関税を“追い風”にする動きもあり、関税=悪とは限らない視点も重要だ。
今後の展望:企業は「柔軟さ」と「スピード」が命綱
トランプ政権の“ディール外交”は、今後も各国政府と企業の双方にプレッシャーをかけ続ける。
企業にとって重要なのは、スピーディに生産拠点・販売ルート・価格政策を変えられる体制を持つことだ。
今後の注目ポイント
- 関税再交渉の行方(8月1日の交渉期限がカギ)
- 米国内のインフレと消費者の動向
- 各国の中央銀行・政府の対抗措置(利下げ、補助金など)
まとめ
「トランプ関税」は、世界の貿易と企業のあり方を根底から揺るがす試練であると同時に、ビジネスモデルや供給網を見直す絶好の“変革のチャンス”でもある。
企業は「守り」だけでなく「攻め」の視点も持ち、激動の世界で生き抜く力が問われている。
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