2025年6月、日銀(日本銀行)が2024年度に株式投資で約1.8兆円もの利益を上げたことが明らかになりました。
この記事では、日銀の株式保有の背景や仕組み、そしてこれが私たちの暮らしや企業経営にどんな影響を与えるのかを、わかりやすく解説します。
日銀が株で稼いだ1.8兆円ってどのくらいすごいの?
1.8兆円と聞いてもピンとこない人も多いでしょう。
例えるなら、東京スカイツリーを建てるのにかかった費用は約650億円。
それの約28倍の金額が日銀の株式投資の利益です。
まさに桁違いの規模です。
しかもこれは実際に手に入れた利益で、含み益(まだ売っていない株が値上がりした分)も合わせると…
日銀はなんと33兆円以上の含み益を持っていると推測されています。
日銀が株を持つ理由って?中央銀行の異例の動き
普通、中央銀行は国の通貨の信用や物価の安定を守るのが役目です。
株を持つなんて、まるで学校の先生が副業で株式投資をしているような、ちょっと変わった話です。
では、なぜ日銀は株を持つことになったのでしょう?
きっかけは過去の金融危機です。
銀行が持っている株が値下がりすると、その銀行自体が危なくなってしまうことがあります。
そこで日銀は、2000年代初めの不良債権問題やリーマンショック後の混乱の中で、銀行が持っていた株を買い取ったり、株価を下支えするためにETF(上場投資信託)を買ったりしました。
これは言わば、金融システムという大きな建物が崩れないように、日銀が柱の役割を果たしたというわけです。
日銀の株の「利益の源泉」はどこ?
日銀の株の利益は、主に2つから生まれています。
1️⃣ ETFの分配金
ETFとは、たくさんの会社の株が詰め合わせになった「株の福袋」のようなものです。
これを持っていると、配当のような「分配金」がもらえます。
日銀はETFをたくさん持っているため、2024年度にはこれだけで約1.38兆円の分配金が入りました。
2️⃣ 銀行から買い取った株の売却益
過去に銀行が持っていた株を買い取った分を少しずつ売っています。
2024年度の売却益は約4700億円でした。
この2つを合計すると、日銀が株で得た利益は約1.85兆円となったのです。
日銀の株保有がもたらす課題
一見「日銀が利益を出して国に還元しているならいいことじゃない?」と思うかもしれません。
実際、この利益の多くは国に納められています。でも、問題もあります。
特に心配されているのは企業経営の監視(コーポレートガバナンス)です。
日銀は東証プライム市場の株の約7%をETFを通じて間接的に持っています。
これは、言わば「株主総会に参加するけど意見は言わない大株主」がたくさんの会社にいるようなものです。
例えば、ETFを通じて日銀が20%以上の株を持っている企業もあります。
通常なら大株主は経営が正しいか、社員や株主のためになっているかをチェックします。
でも、日銀はその役割をETFの運用会社に任せています。
これが「経営監視が弱くなっているのでは?」という懸念につながっています。
日銀がこれからすべきこと
日銀は「時間をかけて慎重にETFを処分していく」としています。
なぜなら、一気に株を売ると株価が下がり、かえって市場に悪影響を与えるからです。
さらに、日銀には「ただ株を持って配当をもらうだけ」でなく、企業に対して賃上げなどの前向きな行動を促す株主の役割を果たすべきだ、という意見も出ています。
まとめ|日銀の株利益は市場にとってプラス?マイナス?
日銀の株式保有は、過去の危機対応としては効果を上げました。
しかし、これからはその巨大な株主の立場をどう活かし、どう市場に返していくのかが問われています。
国民にとっても、日銀の株保有は「物価安定のための異例の戦術」であり、その副作用(例えば経営監視の弱体化)に目を向ける必要があります。
今後、日銀がどのように株を減らし、市場と企業を健全に導くのかに注目が集まっています。

市場は「神の見えざる手」に委ねることが、持続的な経済発展に繋がると考えられていますね。
※「神の見えざる手」とは、18世紀の経済学者アダム・スミスが提唱した概念で、個人が自己の利益を追求する行動が、結果的に社会全体の利益を促進するという市場の自律的な調整機能を指します※
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